2012年08月30日(木)
大豆由来サプリメントエクオールによる肌の老化予防
8月18日、19日に名古屋で美容皮膚科学会が開催され、出席してきました。特に私が興味のあった話題はエクオールのことでした。
エストロゲンは女性ホルモンと呼ばれており、女性の体を守っていることはよく知られています。しかし、50歳前後で閉経によりエストロゲンがなくなると更年期障害、高コレステロール血症、骨粗しょう症など様々な疾患を発症させてきます。また、皮膚に対しては皮膚を薄くして、弾力性の低下、皮脂腺からの皮脂の分泌を低下させます。すなわち皮膚のシワ、たるみ、ハリの低下をまねき、お肌を乾燥させてしまいます。したがって、閉経はお肌の大きな曲がり角となります。これに対してエストロゲンを補うホルモン補充療法は有効な治療法であると考えられます。植物エストロゲンである大豆イソフラボンはエストゲンとして有効な作用を持つことが知られています。さらに最近の研究からは、イソフラボンの中でも、大豆に含まれるダイゼインが腸内細菌で変換してできるエクオールが強いエストロゲン作用を持つ事がわかってきました。しかし、日本人女性の約半数しかエクオールを産生することができません。そこでエクオール産生乳酸菌により産生されたエクオール自体をサプリメントとして投与したところ、更年期障害の緩和、骨量の増量、皮膚の老化予防に有効なことがわかりました。
皮膚に対する実験では、エクオールサプリメントを一日に10ミリ、30ミリを投与した群とプラセボ(薬の有効成分の入っていない薬)を12週間投与したところ、プラセボ群に対してエクオール摂取群では目尻のシワが有意に減少したという結果がでました。ホルモン補充療法の副作用として知られている子宮、乳房疾患に対する検討もされましたが、特に異常所見は認められませんでした。したがって、エクオールは閉経後女性の肌の悩みに対して有効なサプリメントであるということが判明しました。
皮膚のアンチエイジングを目的とするサプリメントは多数市場に出回っていますが、科学的根拠に基づいたものはありません。今後は科学的根拠に基づいたサプリメントの開発に期待し、そして、私自身の立場からもエクオールが早く製品化され、市場にでてくれることを願ってやみません。
[マリ皮フ科クリニック] 鈴木真理
Posted at 11時18分
パーマリンク
2011年08月30日(火)
しわの新しい治療 ―エレクトロポレーション
美容皮膚科を受診される患者様の気になる症状として、しみ・くすみと並んで、しわ・たるみが挙げられます。表情の大きな西洋人は表情筋の動きによりしわができやすく、西洋人より皮膚の厚い日本人は、しわはできにくいものの、たるみが見た目の印象を老けさせ、気にされる方が多いといわれています。
たるみとは、加齢に伴い皮膚のハリが失われるため、垂れ下がり、皮膚の膨らみが生じることをいいます。顔面では眼や口の周囲や頬の下部に生じます。たるみを改善させるには、やはり美容整形で行われているフェイスリフトなどの手術療法が一番有効で効果の持続も期待できます。一方、近年ではレーザーや高周波電気エネルギーを用いた、たるみとり術も進歩しており、様々な機器が発売されています。これらは、皮膚の深部にまで熱による刺激を与え、たるみを改善させ、肌を引き締めます。
しわはその性状から@角質層の乾燥によっておこる乾燥性のしわ、A目尻などにみられる、カラスの足跡とよばれるような小じわ、B額や頬に見られる長くて深いしわ の3つに分類されます。@は、主に角質層の乾燥が原因となるため、保湿力の高い化粧品の使用により、予防、改善が可能です。水分保持能が非常に高いヒアルロン酸を含む基礎化粧品の使用がおすすめです。AやBのしわに対しての治療はヒアルロン酸やボトックスの注入療法が有効です。ボトックス注射は表情の変化で出来るしわ(眉間のたてじわや目尻の笑いじわ、額の横じわなど)に有効です。ボツリヌス菌毒素製剤を表情筋に少量注入して、筋肉の活動亢進を抑えます。そうすることにより、皮膚は滑らかになり、しわが改善されます。
しわに対する注入療法は大変有効ですが、美容皮膚科の患者さんの中には、「しわは気になるけど、注射は痛いし、そこまでは希望しません。」といわれる方がたくさんいらっしゃいます。そのような方を対象に現在おすすめしているのが、エレクトロポレーションという治療です。
エレクトロポレーションとは電気穿孔法ともよばれており、最近注目されている治療です。針の代わりに皮膚正面に特殊な電気パルスをかけることにより一時的に皮膚に隙間をあけ、有効成分を浸透させる治療です。これまで、ビタミンCやプラセンタ、トラネキサム酸などの電気的にイオン化することができる成分はイオン導入治療により皮膚に浸透させることができたのですが、高分子量でイオン化しない成分である、コラーゲンやヒアルロン酸などは皮膚に浸透させることができませんでした。しかし、エレクトロポレーションは高分子物質を含む様々な薬剤、有効成分をダイレクトに皮膚に浸透させることができます。また、治療中の刺激も少なく、唇や眼の周りも治療可能です。
現在主に導入されている薬剤はアルジルリン、ビタミンC誘導体、コラーゲン、プラセンタ、ヒアルロン酸などです。アルジルリンとはとは植物から抽出されたボトックス様効果をもつ物質であり、しわを改善させる効果があります。プラセンタは胎盤から抽出されるエキスであり、美肌効果、抗炎症効果があるといわれています。これらの薬剤を患者さんの症状にあわせて数種類混ぜ合わせて導入します。治療はまず、顔全体に薬剤を導入し、その後、目尻のしわやほうれい線など気になる部分を集中的にケアし、30〜40分かけてじっくり導入を行います。患者さんの中には処置直後から肌のハリが改善したとおっしゃれるかたもみえますが、治療効果を保つためには1〜2週間に1回の施行をおすすめしています。効果は注入療法には劣りますが、患者さんの満足度は比較的高い治療なので、おすすめです。
これから、お肌の乾燥が気になる季節になります。また、紫外線もしわをつくる原因となります。しっかり保湿をして、紫外線を防ぎ、しわを増やさないように気をつけましょう。
[マリ皮フ科クリニック] 鈴木真理
Posted at 17時27分
パーマリンク
2010年09月06日(月)
アトピー性皮膚炎とレーザー脱毛
猛暑だった夏もようやく終わりに近づき、海、山、プールと夏のレジャーも終わろうとしています。今年の夏、毛深いのが悩みの種になっているのにアトピーがあるので、脱毛ができないとあきらめた人はいませんか?
実はアトピー性皮膚炎はレーザー脱毛をすることによって皮膚のかゆみが少なくなり、皮疹もよくなるということが種々な論文で報告されています。毛のないところにレーザーを当ててもアトピーがよくなることから、毛がなくなることによってアトピーがよくなるのではなく、レーザーの光そのものがかゆみを少なくして皮疹をよくするのではないかと言われていますが、今のところはっきりしたことはわかっていません。
アトピー性皮膚炎もかなりひどくて皮膚がジクジクしているような時は脱毛できませんが、きちんとつけ薬をつけてコントロールができているならばレーザー脱毛は可能です。
最近、かなり重症のアトピーで、四肢に痒疹(かゆみの強いブツブツ)ができている人にレーザー脱毛をしました。図1は照射前の足の甲の写真です。赤味の強いブツブツが足の甲に多数あります。図2は照射後約1週間目の写真です。かゆみはほとんどなくなり、皮疹の赤味もひき、盛り上がりも少なくなりました。皮疹のない部位の皮膚もスベスベになりキメもよくなっています。このようにアトピー性皮膚炎のかなりひどい人でもレーザー脱毛によって皮疹が悪化することはなくきれいな皮膚になります。
夏も終わりに近づき、紫外線が少なくなる秋から冬は脱毛を始めるのに最適な時期です。今から脱毛をはじめれば来年の夏にはツルツル、スベスベの肌になっていますよ。アトピー性皮膚炎があっても悩む必要はありません。むだ毛に悩む人はぜひ皮膚科の先生に相談してみてください。
[マリ皮フ科クリニック] 鈴木真理
Posted at 09時42分
パーマリンク
【 過去の記事へ 】