きれいになるための漢方

京都新聞 2003年1月30日掲載記事から引用
【京都新聞 漢方と健康セミナー】

 身近な医療情報を提供し、漢方薬による治療法も合わせて紹介する「京都新聞 漢方と健康セミナー」(京都新聞社主催、株式会社ツムラ協賛)がさきごろ、京都市下京区のぱるるプラザ京都で開催された。

 まず、皮膚科岡田佳子医院の岡田佳子氏が「きれいになるための漢方」の演題で、ニキビやしみの治療法を実例をあげながら紹介、続いて、京都府立医科大学病院教授の吉田俊秀氏が「やせたいけど食べたい人へ」と題して、治療が必要となる肥満症について分かりやすく講演した。その要旨を紹介する。

皮膚科岡田佳子医院
岡田 佳子氏

おかだ・けいこ 昭和63年、兵庫医科大学卒業後、大阪医科大学皮膚科学教室に入局。茨木済生会病院皮膚科医長を経て、一般皮膚科を4年間学ぶ。平成4年、美容皮膚科のパイオニアである名古屋大学付属病院分院皮膚科、早川律子氏の指導のもと、化粧品かぶれ、ニキビ、しみ、しわ、金属アレルギー、アトピー性皮膚炎などについて学ぶ。同7年、皮膚科岡田佳子医院開業。日本皮膚科学会認定専門医。

きれいになるための漢方
最新治療と組み合わせ

 私が漢方と最初に出会ったのは医学部の六回生のときでした。ひどい生理痛に悩んでいたのですが芍薬甘草湯(しゃくやくかんそうとう)を勧められて飲んだところ、三十分程度で非常に楽になり、そのときに「漢方薬って意外と効くな」と感心いたしました。女性に配慮した医学のことをジェンダー医学といいます。女性の体には月経や妊娠・出産、育児、更年期と生物学的な変化が次々と訪れます。それに伴い、女性ホルモンの量が変化し、冷え性や貧血、中年期ののぼせ、頭痛など女性特有の病気に見舞われます。例えばのぼせ、頭痛に対して、西洋医学では何種類もの薬を飲まなければならないところを漢方薬では一つの薬で治療が可能です。また冷え性やクーラー病などには身体を温める作用がある当帰四逆呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)、逆にアトピーで体表は熱く、体内は冷えている人の場合、体の表面の熱は取り、中は温めてくれる白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)など、西洋薬にはない温めたり冷やしたりする働きがあります。最初にご紹介した芍薬甘草湯のように臓器に直接作用し、症状をすぐに取り除く薬もあり、漢方薬は非常に重宝する薬といえます。

 私は美容皮膚科を専門としておりまして、ニキビ、しみの治療といったいわば美しくなるための治療を行っていますが、漢方薬と最新治療を組み合わせることで非常にいい効果を上げています。そこでニキビとしみについてお話します。ニキビは遺伝や毛穴がふさがりやすいなど体質もありますが、精神的なストレス、食事、誤った化粧品使用や洗顔法、お手入れなど、いろいろな誘因によって発症します。これらの誘因でホルモンのバランスが崩れると男性ホルモンの分泌が多くなり皮脂腺から皮脂がたくさん出て毛穴が詰まる。これが初期状態である面疱(めんぽう)(白ニキビ)です。さらにアクネ桿菌や表皮のブドウ球菌などがついて膿疱(のうほう)(赤ニキビ、黄色ニキビ)になり、より進むとニキビ跡に、そこに紫外線などを受けるとしみに発展します。ニキビはスピーディーに治さないとしみになってしまうわけです。ニキビに対しては荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)が代表的な漢方薬で、いずれも抗化膿作用があります。

 次にしみについてですが、一口に「しみ」といっても、三十から四十歳代に多い肝斑(はん)や、老人性色素斑、海水浴後に背中などにできる光線性花弁状色素斑、傷跡に色素が沈着したもの、そばかすもしみといって来院されます。あるいは両側性色素性太田母斑といわれる、目の下や額の部分に左右対称に出現して次第に濃くなってくるものもあります。これはあざの一種です。このように、しみと思って来院されるものには様々なものがあります。種類によって治療法が異なってきますし、すべてに漢方薬が効くわけではありませんが、例えば肝斑には効果的です。肝斑の原因としては黄体ホルモンの上昇や年齢、ストレス・疲労、食事、紫外線が挙げられます。食事に関してはレモン、キュウリ、セロリなどに含まれるソラレンという物質は、体内に吸収されて日光に当たるとしみの原因になりますので気をつけなければなりません。また紫外線には UVA と UVB、UVC がありますが、とくに波長の長い UVA は曇りの日も地表に届き、窓ガラスも透過しますから肌の奥深くまで侵入します。アメリカやオーストラリアでは紫外線による皮膚がんの発生が非常に多く、乳幼児から十八歳ぐらいまで毎日日焼け止めをつけることで、皮膚がんの発生率を七八%抑えることができるという報告もあります。ですから男性も日焼け止めクリームはつけていただいたほうがいいと思います。

 肝斑の予防にはこうした紫外線予防が第一ですが、治療としてはビタミンCやE、トラネキサム酸などの内服、漢方では桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)がよく使われます。最近は機能性化粧品といって従来よりも機能的、先進的な成分を配合した、あるいは臨床試験による効果が把握された化粧品が競って開発されていますし、ケミカルピーリングといって薬品を塗布することで角質層を取り除き、お肌を改善するなどの治療も取り入れられています。

 治療を成功させるには患者さんはどれぐらいきれいに治したいのか、内服はできるのか、他の病気はないか、保守的な治療がいいのか、革新的治療がいいのか、あるいは美容的なことになれば予算や来院できる回数も問題になってきますから患者さんの希望を把握して、患者さんと医師との間に信頼関係を築くことがコツだと考えています。そして異常が出たら素人判断をせずに、まず皮膚科を訪れてご相談いただきたいと思います。