『お肌の健康相談室』の医師による座談会

【シミ編】

福田 それじゃあシミの問題について、いろんなシミがあるわけですが、とりあえずレーザー治療が有効なシミについて、山家先生お願いします。
山家 はい。シミにも本当にいろいろな種類があるんですけど、厚みのあるシミと、ないシミということについて、いわゆる脂漏性角化症のような厚みのあるシミと、ないシミに分けて考えれば、厚みのあるしみはほぼ外用療法とか化粧品は、全然効かないですね。ですからその場合は、きれい汚いということの結果を別にすれば、保険診療の中で可能な電気メスとか、液体窒素の処置とかでも取れるとは思いますが、後の治り方とかには満足いかない場合も結構多いと思います。
日原 特に液体窒素は、逆に薄いグレイのシミを起こすこともありますし、治療にはテクニックが必要ですね。
山家 電気メスも深くなりすぎると陥没することもありますし、厚みのある赤い斑痕ができちゃうこともありますし、もっと洗練された方法を選ぶとすれば、レーザー治療があります。けれど、レーザーの機械自体が大変値段が高いですし、種類もたくさんありますし、パソコンのように毎年毎年、もっといいものが出てくるので、一概にレーザーといっても、どのレーザーで当てたかによって、結果は大きく違うでしょう。厚みのあるシミに関しては、やはりCO2レーザーで、厚みを平らになるまで削るしかないでしょう。平らになってしまったシミに関しては、黒い色素、褐色の色素に特異的に反応するようなレーザー、例えばルビーとか、アレキサンドライトとか、ヤグとか…。それもQスイッチという名前が上に付いているものの方が、より繊細な仕事ができると言われています。けれども、レーザー治療にしたところで100%良いというわけでもなくて、例えばレーザーの適応になっているシミ、肝斑とかのようなボーっとしたシミは、レーザーをかけるとかえって悪くなることも大変多いんですが、レーザーがよく効くといわれているシミだけに限定しても、当てた後、三週間から一カ月くらいたった後に、いわゆるレーザー焼けと言われているような現象、つまり、もう一回色が戻ってくるという方も、決して少ないわけではありません。そのときはやはり、事前にいくら説明していても、患者さんはがっかりなさるし、慣れないときは私たち医者の方も、「どうしよう」と一緒にがっかりしているんですが、そういうレーザー焼けの現象にたびたび遭遇して慣れてくると、これもその後で、ある特殊な外用療法をすることによって、あるいはほっといてすら、再度の色素沈着は結構よくなるものです。だから安心して、場数と症例を重ねるごとに、再度の色素沈着を認めても、結構余裕を持って、希望を持って見ていることができるようになりました。レーザーがよく効くシミということに限定しても、100%それでOKというわけにはいかないように思います。
福田 赤井先生、どうですか。
赤井 私も、レーザー焼け現象とかに遭遇するようになって、「100%は効かないよ」っていうことを患者さんにも事前によく説明して、理解していただくようにはしているんですけども、それでも最初に患者さんのシミを見たときに、それがレーザーが効くと診断されているシミであっても、どの程度効くかまでは判断しかねるっていう感じはあります。
山家 なんか、中年のご婦人の方がお年寄りの方よりも、色素沈着が出てくる確率は高いような気がしませんか。お年寄りの方の方がきれいによくなりますよね。まだホルモン活動があるくらい、更年期の前か、更年期にかかったくらいの方のシミの方が、治療が難しく、60、70ぐらいの方の方が楽なような…。いかがですか。
赤井 確かにかなり高年齢の方、まあ、少ないんですが、そういう患者さんがみえるケースは。だから、経験も少ないんですが、そういう中でも、男性の高年齢の方はスカッときれいに取れるかなと――。もう少し若い方の方が治療は難しいし、20代、30代の方は差が激しい。きれいになる人と反応がほとんど出ないっていう人の差が…。
山家 取れた後に、ああ、良かったと思って喜んでいた方が、また三週間ぐらいたってから色素が出てくると、ほんとにがっかりするんですよね。じゃあ、また当ててくださいっておっしゃるんですけれど、やっぱり私は当てないんですよね。二、三カ月何もしないで様子を見るか、外用療法だけするか。たいていきれいになってくるので。
日原 それから色素班の大きさでも、効き目の違いはありますね。
岡田 同じような濃淡とかでも、治療効果が違うこと、それから部位の上下でも。
山家 手背は取れにくいですね。一番、顔が効くんじゃないかな。
岡田 背中も効きます。手足は難しい。
福田 僕は皮膚科でレーザーやらないもんだから、電気メスでやるんですけど、どういう症例をやるかというと、ある程度年寄りで、脂漏性角化症みたいな、ちょっと盛り上がっているのはうまくいくんですよ。今の話を聞いてると、問題は皮膚の厚さじゃないかな。皮膚の厚いところは割合うまくいくんじゃないかな。背中なんかの皮膚も厚いし。顔でも年を取ると結構厚くなってくるでしょ。
山家 やっぱり肝斑と混じって老人性色素斑のあるような人が難しいですね。ですから肝斑っぽい病変とか、び漫性のくすみみたいなのが多い人で、老人性色素班があるという人は、なるべくレーザーも当てたくない。老人性色素班と脂漏性角化症という人の方は楽ですよね。
福田 いわゆる肝斑はどうされますか。
山家 レーザーはだめと言われてますから、ハイドロキノンとレチノイン酸の併用療法、あるいはハイドロキノン単独、それらでトラブルが起きる場合は、コウジ酸の外用をやってます。それからトラネキサム酸とビタミンCとかの内服ですよね。後は時間とお金に余裕のある方の場合には、プラセンター、ビタミンCのイオン導入なんかをやってますよね。肝斑は、トランサミンが効く人にはすっごく効きますね。ただ再発しますよね。二カ月ぐらいでね。
日原 ずっとトランサミンを飲ませるのは抵抗がある。だからどうしても外用療法、トリートメント、ビタミンCの高濃度のイオン導入、それにプラセンターを混ぜたものとか。0.1〜0.05%のトレチノインジェルに、ハイドロキノンとか混ぜてとか。
山家 レチノイン酸もハイドロキノンも保険適用ではないですから、自費の負担がかかってしまいますよね。でも、選択肢は多い方が、どれかが当たります。ハイドロキノンのみよりは、トレチノインと併用した方がはるかに効きますよね。ただし、ちょっとしたリアクション、赤くなるとか、ひりひり感があるとかはあります。いやなリアクションがある方が、シミは取れやすいから難しいですよね。
日原 外用しても反応しない人は、最近はもうオーソドックスな美白剤とかの前に、まずピーリング。ピーリングにはすごく浅いとことか中層、深層まではやりませんけど、それで表皮を剥離して、そこにもう一回、ハイドロキノンとか、ビタミンCとかコウジ酸とかを加えていく。またその前に、ハイドロキノンとか、コウジ酸とか、私たちが使うもろもろの美白剤にかぶれる人っていますよね。しかも連鎖的にだめになる。今ちょっと期待しているのは、サルチル酸のピーリング。今は私たちはグリコール酸を使っていますけど。ただ、どんな人にも言えるんですけど、どうして治らないのかなっていうのには、30代から40代の方たちのライフスタイルとか、お化粧の仕方とか、食べ物とか、睡眠とか、そういうのが総合的に良くないんじゃないのかな。ホルモンは確実に関係あると思いますね。
山家 ホルモンが関係しないシミの方が、後腐れがなかったりするんですよね。
日原 今はどちらかというと、女性に化粧の仕方を教える。生活態度を見直してもらう、食べ物も注意してもらう。そうすると、広範囲に患者さんと付き合っていかなくちゃならないので、結構時間がかかる。
岡田 レーザーとかやった後に、もう次の日からガーゼも張らずにバンバン日光に当たっていいと思ってはる人多いんですが、「だめですよ」って言って初めて、「ええっ」っていう感じ。そして「また、日を改めて出直してくる」という人、案外多いんですよね。レーザー治療も学校の先生やったら夏休みの間にするとか、冬休みとか、そういうライフスタイルを今の人は崩さないで治してほしい。それはもう、絶対ですよね。
山家 だからこのごろ、かさぶたがつかないレーザーを、みんな切望しているんですよね。かさぶたがつかないで、すぐお化粧ができて、すぐ普通の暮らしができて、シミも小じわも良くなって…。そんなすばらしいレーザー、私は体験してないから分からないけれど、もしそれができるなら、本当にすばらしいことですよね。
高橋 私は主にニキビ専門でやっているんで、シミの患者はあまりないんですけど、アレキサンドライトでシミは取れますか?
山家 ただ、脱毛用のレーザーをそのまま当てて、20ジュールぐらいにしても全然だめでしょ。でも黒いマジックを患部に塗ってみますとね、ドカーンってすごい感じになるから私はあまりやりたくないんですけど、黒いとこだけ熱を吸収しますから抜けますよ。ずるむけって状態ですから、あと濡れたガーゼでピュッと吹けば…。だから、後の結果はシミ用のレーザーでやった方がいいんじゃないですか。ただ、黒くした所を焼いて取ったっていうだけだから。だから、あまりやっていないですけど、小さいほくろを取るぐらいですかしら。男の方で、ご老人の方で、あまりいろいろ言わない方だったら、マジックで塗っておいてバンバーンと当てていけば…。
高橋 それなら、まだ液体窒素でやった方がいいわ。
山家 ただ、液体窒素も水膨れになったりするでしょ。レーザーだったら、その時は痛いけど、後はそんなに引きませんよね。
高橋 うちは、シミの人があまりいないんで、アレキサンドライトは使わずに、液体窒素やケミカルピーリングで主に対応しています。あんまり、ニキビの人ほどシミの人は劇的にきれいにならないですね。
山家 レチノイン酸の高濃度のジェルを使うと効きますけど、ずるむけ赤むけ来ますよね。それがある時期赤みの方が黒みよりも目立つんですよね。うんと黒いシミだったらまだいいんですけど、薄めのシミにはむしろ治療しない方がいいのではと、迷うときがありますよね。
日原 できちゃったシミもあるし、レーザー後のフォローのための予防もあるし、ニキビ痕の色素沈着も。若い人でもお年寄りでも、基本は傘を持ってお化粧をして、そこのカウンセリングをまずやった上で、次の各論の診察に入って、指針を出して、選択肢を提示して…というチャートを作ってあげないと。私最近は戻ってね、いろんな化粧品メーカーがいろんなものを出してきてるし、いいとは思うんですけど、何をやるにしても、サンスクリーンに伴うメイクアップの方法を教えないとまた出てきちゃう。特に更年期前後、まだ子どもを生んでない元気な三十代前後の人も、レーザーを中心に多くやり始めていますけど、基本はカウンセリング、化粧品に対する認識を高くするためのね。やはり、そこにメイクアップアーティストがいて、きちんとメイクをして、またそれを自分で落として、また自分でやれるように。それも薄化粧っぽくなくてきれいにできる方法を。患者さんってどんな病気でもそうなんですけど、文章で書くよりも、生の声で聞く方が安心できる。プリント一枚もらうより、ちゃんとしたテクニシャンがいて、手取り足取りやってくれることを好みます。それは、今までのその人の習慣を直していくのにも必要ではないかしら。女性の場合は特に必要だと思います。男性の場合は意外と素直といいますか、日焼け止めを使わなくちゃいけないと言ったら、絶対それを守ってくれますからね。
山家 男の人の方が、ゴルフに行って焼けたからまたシミ抜きに戻りましたって、素直に認めてくれるんです。私が悪いんですってね。
日原 こちらも一生懸命治療するんですけど、患者さん側に望みたいのは、やはりご自身の肌はご自身が守しかないということ。遊びの中で十年後にシミをしっかり作るようなことをやっているより、それよりも予防的な生活をしっかりしていれば、そのうち確たる治療の技術が、特にレーザーなんかでちゃんと出てきますよね。
山家 シミとかの原因は、去年とか今年の紫外線ではなくて、生まれたときからずっと続いているんですよね。今治療をすればある程度の効果はありますが、生まれたときからの蓄積をどうやってリセットするかは難しいですよ。私たちの子どものころは、日光は良いもので、たくさん浴びましょうでしたけど、今は反対なんですよね。だから蓄積紫外線の害ということになりますと、今から生活を変えても、難しいところがあって…。
鈴木 最近生まれてくる赤ちゃんは、ベビー用のサンスクリーン、みんな使ってますからね。
日原 だから、今患者さんは迷ってしまう。そこで、今、皮膚科の先生がいいと言われていることを、次世代のため、子どものためにしてあげるということですよね。職業によっては、保母さん、テニスの選手とか、ちょっと意識が足らないかな。
岡田 保母さんは意識があっても、仕事上実践は無理。かわいそう。
福田 紫外線防御になんかいい化粧品はないですか。
鈴木 ほとんどのファンデーションとかにその要素がありますけど、SPFってありますよね、どんどん数字の競争になって、去年からは50以上はもうできなくなっちゃったのかな。その数字に惑わされ、サンスクリーンを朝つければそれで一日ちゃんと大丈夫だと思い込んでいる人がすごく多いんですよ。しかし、汗を吹けば落ちちゃうと思うし、皮膚科医としては、サンスクリーンを使うことも大切ですが、つけ直しの指導とかしないとだめなんじゃないかしら。
福田 正しく使うにはどうしたらいいと思いますか。
鈴木 やっぱりこまめにつけかえること。SPFの数字にあまりこだわらないほうがいい。30超えたら全部一緒。私たち黄色人種には、50、100だのって必要ないはずですし。吸収剤を入れてくると、逆にかぶれる人が出てきます。それよりは、低刺激のものを何回もつけかえる方がいいと思います。
福田 大体のまとめをすると、シミの中にもレーザーで効くものと効かないものがあって、それを医師に見極めてもらい、効かないもので他の方法があるから相談を、というのがまず一点。予防については、サンスクリーン剤をこまめにつけかえると。そのほか、何か患者さんに知っておいていただきたいことはありますか。
山家 今はインターネットなどで個人輸入ができるので、勝手にアメリカなどの強めのシミ抜きの薬を買いますよね。それで、何も相談しないでご自分で使うでしょ。そうすると結構失敗多いみたいですね。海外旅行も盛んだから、それこそピーリング剤入りの化粧品がハワイとかに売ってますよね。それを買って来られて使って、トラブルが発生している人とか。使用方法がよく分からないまま使われて困ってらっしゃる方もいるので、個人輸入の場合は、使い方が分からないとか、使ってみて変だったら、すぐ専門医にご相談なさった方がいいんじゃないでしょうか?
日原 そもそもアメリカだったら医者しか処方できないものが、インターネットで個人輸入できること自体がおかしいんですね。ちゃんと説明書を読んでも、そこにはあくまでも原則しか書いてありません。応用とか副作用とか、細かい問題があるので、医者が同じものを使っていても、使い方は全然違うと思ってくださった方がいい。もし何かわからなければ、私どものクリニックに来ていただければ、ある程度の知識は…。
福田 また黄色人種と白色人種で全然反応も違いますからね。
山家 できれば欧米と同じ薬を日本の医者も国内で使えるようにしてくれた方がいいと思います。そうした方が、患者さんというより、日本の国民のためだと思いますよね。患者さんには、まずその薬が自分にとっていいかどうかも分からない。それから、他の誰もまったく責任をとってくれない自己責任の世界ですよね。だから個人輸入の大幅緩和はよいこともあるけれど、その反面リスクもあるわけで、欧米で使われている薬が日本でも普通に使われる薬になるのが一番いいことだと思いますね。
福田 日本の厚生労働省は難しいですものね。
日原 化粧品は、2001年4月から全商品成分表示が義務付けられましたし、ただ濃度的にはマックス(最大限)まで入れられるから……そうすると、日本の商品にも危険があるということかもしれませんね。
やんべ でも日本のメーカーのものなら、PL法でもってメーカーの責任を問えますが、個人輸入の品物は化粧品でも薬でも自己責任。だから、本当に国民の身になって考えてくれるのであれば、日本でも普通に買えるようにするのが一番だと思います。薬局で買えなくても、医院で処方できるようにするのが一番だと思います。
福田 厚生労働省は責任をとりたくないから、やりたくないわけですよね。だって、それを認めると、その時点から厚生労働省の責任になりますからね。厚生労働省は国民の自己責任が一番いい。
日原 ピーリングに関しましては、私たちもここ4、5年ですよね。濃度とかPHとか、時間の放置とか…。うまくいく、いかない、色々ありますし、刺激症状も個人的に全部違う。自分ではあまりお使いにならない方がいい。
山家 でも、外国では売られていますからね。
福田 今、若い子はインターネットで何でも調べちゃうからね。
岡田 聞きかじりっていうと悪いけどね…。
日原 観念的にしか分かってないので、あくまでもこちらはよくフォローしてやってあげる。そうでないと、今度はこちらが言葉尻をつかまれて、怒られる。信頼関係のある医者との間でしか、特殊な処方は成り立ちにくいと思います。ただ、もう絶対治りますよという医者の一言に頼り切らずに、ちゃんとテストを重ねて、疑問であれば質問をして変えていってもらうようなことがないと、難しいかも知れません。
山家 メンタルケアが大切って言いますが、それって難しいですよね。「ひっかいてはいけません」っていうでしょ。分かっていてもかきたくなるものなんですよ。言われると、よけいにやりたくなるようなところがある。どうやってケアをすればいいかが難しい。 
高橋 リザベンを使いますと、かかなくはならないですけど、傷跡はひどくならないです。
福田 ケロイドみたいになっているのには、結構効き目がありますよね。
山家 でも、リザベンも長期には使えないし、なるべく大したことでないことには使いたくないですし。
日原 例えば、こぶしの付近に色素沈着があったら、それをちゃんと見てあげることですね。アトピーの場合と同じで、こすってませんか、それが手にこう出るんですよと、ちょっと心理療法的な話の持っていきようがあると思う。診療してて、残念ながら、自分でかいてることはほとんどの方がちゃんと意識していますね。何でやってるかというと、やっぱり気になるからと答える。それをやると黒くなるわよ、化膿しますよ、シミになるわよっていってもやっぱり気にかかる。そういう方が5年、10年と通ってくる方がいるので、お母さんも呼んで話をするんですけど、一時期は収まって一年ぐらいは来なくなる。また、社会人になってストレスが加わるとまた発症する。私はこの件に関しては、メンタルケアは皮膚科医のそばにいる心理療法士さんにお願いするのがベストだけれど、いわゆる精神科の先生とか、心療内科の先生とかと一緒になってやっていかないと、一時的には収まっても繰り返すと思います。
山家 どんな病気にもメンタルケアは必要で、薬を出しておしまいじゃいけないと分かっていても、どういうメンタルケアが有効なのかとか考えると難しいですよね。
高橋 ニキビがきれいになれば問題ないわけですよ。ニキビがあるから精神的なストレスが発生するわけですから。週に一回、ケミカルピーリングとかに通っていると、それでだんだんきれいになるのがわかってくるから、安心するというのがいいんですよ。結局ニキビをきれいにしてあげれば、心の問題もだんだん解決するわけです。
日原 もともとの気質はかわらないから、再発させずに、できれば治療を一回で済ませてあげたいところですね。
福田 例えばアトピーとかニキビで「精神科行きなさい」とか言ったら、向こうも怒っちゃうもんね。
岡田 漢方薬は皆さん受け入れやすいから、私は使うようにしてますけどね。
鈴木 患者さんの方も、実は(精神科などへ)行きたいけれどきっかけがない。どういうところへ行ったらいいか分からないという方も、少なくないんじゃないかしら。
福田 精神科の先生も得意とするところが違うから、何でも精神科へ送ればいいかと言えば。それも違う。
鈴木 なんか専門分野があるみたいで、昔大学病院で一緒にやってた人の中にも、分裂症なら興味があるけど、ほかの分野は見たくないとか。若い女の子なら若い女の子が合う先生っていうのかな、そういうところへ持っていかないと、おじさんみたいな先生で「ニキビなんか何よ、そんなのおかしい」って言われれば、それで終わっちゃうから。あと婦人科の先生とか精神科の先生で、こういった美容関係に興味を持ってくださる方がいらっしゃると、すごく治療はやりやすくなりますよね。
山家 アトピーでもこのごろ、心療内科的取り組みが始まっていますよね。
福田 でも大変なんですよね、あれ。やってる先生の話を聞くと。
山家 診療報酬のことを考えると、とてもやってられませんよね。アトピーの患者さんやニキビの患者さんで精神科へも同時に通ってるっていう人、結構いますよ。
高橋 せっかく精神科へ行っても、ニキビ治すのが先決です。ニキビが消えたら心の方もよくなります、皮膚科の医者に治してもらえって、言われるだけだったりしてね。
岡田 でも最近、精神科へ通う若い女の子って結構多いですよね。メンタルクリニックとかいって。「精神病院」には抵抗があるけれど。
日原 精神科に通いながら、ニキビとかシミとか不安の原因であるお顔のトラブル、患者さんも分かってて、両方の病院に通い、薬も飲んでますって、昔と違って普通に平気に言われるようになりましたよね。だから、そういう患者さんに「最近大丈夫?心のコントロール、ちゃんとできてる?」って聞くと、「はい」って答える。そういう人はお顔の状態もいいんですよね。精神科と皮膚科の間を行ったり来たりしながら、自分のことを守っていく。それは必要なことですよね。
福田 そこまでいくと社会の問題でしょ。かなりストレスが多い社会で、いい子がんばり屋さんをするから疲れてしまう。
山家 あとはね、女の子だから、会社へお化粧して行かなくちゃいけないんですよ。そうするとニキビって厚化粧すると良くないって言われてますよね。でもきたないニキビは隠していかないと、会社の上司に怒られるという、そういう事情もあるようですよ。
日原 スチュワーデスの人たちはもっと厳しくて、ニキビがひどいと、フライトできないとか、おやすみにしなさいとかで、受付とか、働いちゃいけないと。
福田 だったら、ラッキーと思って働かなきゃいいのに。
山家 リストラの時代だから、やはり不安になりますよ。
日原 やっとスチュワーデスになった、自分の夢だったって方が多いんですよ。
山家 でも何か、朝・晩時間的にむちゃくちゃの暮らしになっちゃうと、ニキビ出そうですね。
日原 経験上、特に芸能人の方、モデルさんも含めてね。最初は学生さんでスカウトされてくるから、そこで生活が急に変わりますよね。18歳ぐらいでしょうか。すると幕の内弁当食べながら、夜中4時ぐらいまでスタンバイしてライトに当たって、また学校行って、化粧してっていう、そういう時すっごく出るんですけど、しばらく来なくなったなあと思って、テレビをふっと付けたら、もう駆け足のようにね有名になって、すっごくきれいになっている。ということは、生活は変わらないと思うんですが、充実感、満足度、忙しい中でも周りが認めてくれるという、あれで直ってくるんじゃないかと、最近思っているんですけど。
山家 うつになるとニキビがひどくなるって言いますよね。シミも増えます。うつって病気の基かも知れませんね。
福田 でもきっと(芸能人の方は)その時って、頭の中でアドレナリンとかドーパミンとかがいっぱいで出ているんで調子いいんだろうけれど、体にはかなり負担が来ているんでしょうね。
日原 一つクリアすると良くなって、また何かが起きるとぶり返すといいうことですよね。シミの患者さんなんかも、よくレストランなんかで見ていると、何かやっぱり暗い、下を向いてる方が多いですよね。それがシミが少しでも良くなると、だんだん顔が上がってきますよね。
山家 だから原因と結果、どちらが先なのか分からないけど、悪い方に回り始めると、どんどんそっちへ行っちゃいますし。まず最初、その人が幸せだと感じる何かを見つけることが大切ですね。
日原 それから最近は、昔あった化粧品による色素沈着型皮膚炎、シミはほとんど今はどうでしょう。
鈴木 減りましたね。ほとんどもうないような状態です。でも、外国化粧品にはまだありますよね。結局、一番有名だったパンっていうピンクの色素は、もう日本では使ってないんですよ。ところが私たちが海外へ行くと、向こうの口紅とかものすごく鮮やかに映るんですよ。日本のメーカーは、口紅でも何でも色の悪いものを流行させてるそうなんです。その方がより安全にできるんですよ。タール色素とか抜いて色ができるから、危ないものを使いたくないので、メーカーがくすんだような色に誘導しているわけなんです。そういう色を見慣れている人たちが海外に行って、パッと鮮やかな色を見ると飛びついちゃう。日本の化粧品メーカーって、黒皮症の裁判で被害者に莫大なお金を払っているでしょう。もう二度と繰り返したくない。それでその辺のところはしっかりやっているみたいですね。でも、海外から入ってくるとなると、また黒皮症が増えてくると予言なさる先生もいますよね。
日原 また、アロマテラピーによる障害も増えているんですよね。
岡田 脂漏部位について、色素沈着型接触皮膚炎を起こす。だから、男性には起こりにくい、お化粧をしないから。脂分が多くてお化粧をしたことで、油脂とアロマテラピーの粒子がくっついちゃうんですよね。鼻の下にちょうどひげが生えたみたいな感じとかで来られた場合には、あなたお香たきましたかとか、お部屋でスプレーしましたとか、そういうケースもありますね。香水ではなりにくいと思います。
鈴木 香料ってみんな調香して使うので、結構混ざり合ってくるんですよ。だからいろんな成分が少しずつ入って来ちゃってるもんだから、原因究明が難しい。最近、香料の成分に反応する人が結構出るかなって気はしますね。黒皮症が昔は色素だったんですが、今は香料で起きる黒皮症ってあると思うんですよ。そしてまたその系統が増えて来るんじゃないかしら。だいたい患者さんって香料が苦手で、「私、においのものに弱いんです」と知ってみえる方は、意外に多いような気がします。何となく調子が悪い、避けてるっていう人も。
日原 香水売場を歩けないっていうひともありますね。気持ち悪くなるって。
山家 ラベンダーでぜん息が起きたという報告もありますよ。
鈴木 ラベンダーとかジャスミンとかも、「かぶれた」という事例が多いですよ。
山家 たくさん使われているっていうことでしょうかね。今まで使われていなかったようなものがこれからどんどん使われるようになれば、新しい原因物質も増えてきますね。
鈴木 もともと日本人は香料を好まないというか、強いにおいは苦手なんですね。今の若い人たちって、においがある物を買わないんですってね。においがない、あっちゃいけない、良いにおいも、悪いにおいもしちゃいけない。だから、おじさんのにおいも消したがる! 足のにおいを消すスプレーとか、そういうものが、ものすごく売れるそうですね。上から良いにおいをつけて悪いにおいを消すのではなく、何もなしにしたがるようです。
福田 樹脂ににおいを吸収させる新技術があるようですよ。どんな形にでも加工可能だそうですよ。
山家 一方で無臭がはやってて、一方でアロマがはやってる。においってのは、自分だけのことで終わらずに、拡散していきますから、よその人にも影響を及ぼしますよね。化粧品に問題があれば、それを塗った人だけがかぶれます。けれど、においが問題だとその部屋にいる人みんなに影響が出る恐れもあります。満員電車でダメなにおいの人が隣にいたり、音楽会とか行って、前のおじさんの整髪料がいやなにおいだったりすると、もう最悪。においは規制できないから。
福田 シミに関する話題はこの辺で、シワの話へいきましょうか。

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