『お肌の健康相談室』の医師による座談会

【しわ編】

岡田 一般に小じわの方は乾燥などが原因になることが多くって、目元などにできやすいのが特徴です。大じわというのは、表情筋の動きとか、そういう年をとって下がっていったりするのが原因だとされています。大じわの方はやはり紫外線、特にUVAの方が問題になりますね。だから、日焼け止めの選び方なんかでも、UVAをカットするような種類を選ばないと意味ないし、例えばUVAの場合は、窓越しに来るこういう光とかでもしわの原因になるわけですから、車の運転のときなんかも、注意していただかないとだめだなと思うんですけど。
福田 かつてのガン黒ねえちゃんたちは、これからどうしたらいいんでしょうか。
岡田 難しいですね。ガン黒だけであったら、ピーリングをしたり、これから日焼けをしないようにするとかで改善できますが、アトピー性皮膚炎を合併したりとか、ほかの症状がある場合には、話がややこしくなりますね。私は同じガン黒でも、もとのお肌の色が結構大事だと思うんですね。もともとスキンタイプの5とか6とかの人が、さらにガン黒になられたのか、それとも色白でなられたのかにもよると思うんですね。もともと色白の人であれば、ピーリングやなんかも効くと思いますが、かなり黒い人がさらにガン黒っていう場合は、ちょっと難しいかなあと思います。
福田 そういうときにビタミンCのピーリングなんかは、効果があると思いますか。
岡田 私はあると思いますね。プラセンタとか、ビタミンCのイオン導入だとかもいいと思いますし。あと最近、2001年の4月から解禁になって、ビタミンCが4%とか含まれるようになってきましたので、そういうものの外用とかもいいと思いますけどね。
福田 内服は、しわに効果はありますか?
岡田 ユビキノンとかならね。
日原 ユビキノンは心臓にある酵素で、まず心臓疾患のお薬として発売されたんですよね。DNAの段階での修復ですね。うんと年とってからというわけでなくて、減っていくのを補充するわけですね。そうすると表皮細胞のDNAが傷つくのを抑えてくれる。それを外用剤として入れてあるものが、海外にありますね。日本でもエーザイから薬局向けの物が出ています。ビタミンCとEとか、油溶性のビタミンと一緒だから、油物の食事をした後に飲んだ方が吸収しやすい。
福田 一時はやったコラーゲンの内服なんかはどうなんですか。
山家 コラーゲンは分解されちゃうし…。
日原 人間の表皮はタンパク質でできているから、高タンパクのおいしい食事を取って、水分をたくさん取って寝た方がいい。それよりは、表皮からどのくらい入るか? ビタミンCとかA酸、トレチノイン、あとレーザーですね。レーザーにしても何に効くかというと、真皮、表皮のちょっと下にあるコラーゲン繊維を増やすことなので…。レーザー可能性はまだまだこれからだと思います。今はビタミンCもだんだん濃度を上げて… 。ただ一般では4%が限界かしら。医者としては15%ぐらいまでのものがありますけど、刺激も乾燥も強くなるので、ピーリングと同じような副作用が若干あるから、濃度を抑えていくか、保湿しながらやってかなきゃいけないと思います。
岡田 小じわでしたら、コスメティックなもの、化粧品とかでも予防とか十分できると思うんですよ。でも大じわになるとやはりヒアルロン酸の注入や、コラーゲン注入とかいう療法に踏み込まなければならないですね。
山家 一般の人たちは、できることなら手術をしないで、もっと気軽な感じでしわを伸ばしたいと思っていますよね。痛くない、早い、副作用がない。そしてすぐお化粧ができるようにとみんな思っていますよね。ですから手術療法以外で手軽にしわが伸びたら最高で、それなら私もやりたいですよね。
日原 後は事後の手入れ、ホームケアとくっつけていかないと、一回やったからといって、ピーリングもビタミンCも持続性はないので、補給していくことが大事になりますね。私たちもそれをもっと言い続けていかないと。
山家 栄養が悪くなったら、きっとシワシワになりますね。
鈴木 それと、あんまりやせたり太ったりしない方がいいですね。ある程度の年齢になってくると、急激に太って急激にやせるのはお肌のためにも良くないですね。
日原 それからあの皮膚線状、あれはどうしようもないですね。
岡田 笑うとしわができるから。
福田 あれはされたことありますか? ボツリヌス毒素の神経麻痺。
山家 ないです。怖いです。
日原 特に眉間のところに効いて、神経麻痺を起こすのでそこの緊張が取れる。
山家 調節がうまくできないでしょ。つっぱってしまったらそれっきり。
日原 あとはヒアルロン酸とコラーゲンの注入方法は、皮膚科でもやれますよね。今はどちらがいいんでしょうかね。
赤井 いっぱいテストしないで済むので、やはりヒアルロン酸でしょう。
高橋 コラーゲンはアレルギー反応を起こす人がいますし。
日原 その辺は皮膚科の医師が率先してやるのでなく、やっぱり形成外科の先生がやっていくべきですね。
福田 僕思っているのはね、治療したときに失敗してそれをリカバーできるものがなかったら、やっぱり手を出しちゃダメだと思うんですね。
高橋 そうですね。例えば固くなって、しこりになったような時に、それを修復する技術がないとダメですね。
福田 そういう自信がない人は、やらない方がいいと思う。
山家 先生、失敗なさったことありますか。
福田 僕は今のところ、そんなにやってないですし。この年になると、危ないことやりたくないから。
岡田 福田先生、手術うまいから。
福田 いやいや。だからできるだけ、次の手段がないやつはやらないことですよ。
岡田 治療っていうものは何でもそうやね、一つやってダメやったら次の手を考えておかないと、円形脱毛でも何でも治らないもんね。これでダメだったら次はこれ、その次はこれって考えていかないと。
山家 その病変に対していくつかの治療手段を持っていないとね。その病気を引き受けたくないですね。
日原 それは私たちの責任として、考えておかないと。
福田 何でも手を出して治らないと、後でえらい目をくう。患者さんにも迷惑かけるし、自分もつらい思いをしなくちゃならないし。
山家 とりあえず今手に入れることができる最高に近い治療法のうちのいくつかを駆使できる病気のみを取り扱っていくことでしょう。
岡田 そういう意味では、今度の広告規制の緩和とかは、すごくいいですよね。自分がどういう病気が得意かを書いてもいいということに。
山家 看板に、専門医とか医学博士とか書けるんですよね。
岡田 NHKのニュースで言っていました。もう近々ですよ。みんな看板とかの作り直しにかかりますよ。どういう分野の治療が得意であるとか、電話帳はもちろんのこと…。どこどこ大学卒業とか、書いてもいいそうなんですよ。
福田 なるよっていう話ですよね。厚生労働省は何か問題が起こった時に、自分の方に振られるのは絶対いやですからね。(筆者注:解禁は来年4月の予定)
山家 あと混合診療も解禁したいという流れが、経済界とか政府とかで強くなってきているでしょう。医師会は反対していますけど。医師会との政財界の間に立って、厚生労働省は玉虫色の発言をしていますけど。
福田 保険の財源がなくなってきてるので、混合診療でも何でもやってもらって、保険の財源を削りたいって、それだけの話でしょ。
山家 そうなってくると、また診療形態も変わってきますよね。努力しないとダメになる。他と差別化を図らないとね。今まではみんな一緒に一列に並んでやってこられましたけどね。
福田 だから多分ね、今までは僕ら皮膚科の場合でいうと、水虫だとかアトピーだとかニキビだとかをみておけば、生活に困るようなことはなかったんですよね。だけどもう、これからは医者が増えてきているもので、今までのことだけやって来たんじゃ、もう何ともならないと。そうすると新しい先生が、しわだとかシミだとか脱毛だとかにどんどんウエートを置き始めているんじゃないですか。日原先生のところももうそうでしょう。周りにどんどん新しい同業者が出来始めていますよね。東京でそういう流れが起きれば、数年で全国に広がっていくと思われますよ。われわれ開業医としては、情報をある程度手に入れるってのと、治療手段をよりたくさん持つことを心がけていくしかないですよね。
岡田 でもまだまだ混合診療は難しいですよ。反対してる人いてるからね。将来的には絶対なるんやけれど、今年とか来年とかには難しいですよ。数年以内にはなると思う。
福田 日本国の保険医療も、もうパンクしているからさ、基本的には。
高橋 話を戻しますが、顔のしわって結構いろいろやり方がありますよね。でも、首とか手のしわはどうしたらいいんですかね。
日原 これは結局、脂肪もなくなってきて、コラーゲン線維もないという状態でしょ。皮下脂肪がなくなって…。
高橋 首の傷って顔に比べるとすごく治りにくいですよね。ニキビの跡とか。あれはやっぱり、毛細血管が顔ほど首ってないんですか。どうして首の傷ってあんなに治りにくいんですか。あとケミカルピーリングとかも、アメリカの学会では、顔はいいけど首には絶対やっちゃいけない、危険だって。何を使っても大丈夫といわれる白人すら、やっちゃいけないって言われてますよね。
岡田 毛穴が開きにくいですよね。閉塞しやすいんですよ。顔は開放性が多いけど、首は閉塞性面皰とか、そういう毛穴の開かないのが非常に多い、だから治りにくいんですよね。
日原 それにしても、しわに関して皮膚科にできることは、まだまだ限られていますよね。どうしてもしわっていうと、手術とか形成外科とか美容外科の方へ行っちゃいますよね。テレビ局から相談番組に出演を依頼されたときには断りました。怖くて答えられないと。でもね、お肌に関してどんなことを知りたいかっていう調査をすると、やっぱりしわが一番なんですって。
鈴木 シミよりもしわの方に、主婦は困っているそうですよ。何とかしてくださいっていう要望が多いと、テレビ局の人は言ってましたね。
岡田 要はね、主婦の人ってレーザー治療やるかと言ったら、やんないねん。フェイスリフトやるかって言ったら、やんないねん。そうじゃなくて、もっとみんなが知りたいことは、一般的にどうやったらこれ以上増えないかとか、ちょっと塗るだけで良くなったりするものはないか、とかなんですよ。だから、レーザーをガンガン顔中にかけて、しわを取ろうとする人なんていないし…。主婦ってやっぱり金銭感覚厳しいやん。
高橋 最近、狂牛病とかの恐怖が週刊誌なんかに盛んに書かれて、患者さんとかも動物由来の薬剤とかに恐れおののいているでしょう。
岡田 だから、お医者さんで扱っている胎盤エキスなんかは、ほとんど人由来のものやから、安全性は保証されていることをやっぱりPRしていかなくちゃね。
鈴木 胎盤そのものを皮下に埋める若返りの手術を、聞いたことがあります。
高橋 日本でもやってるみたいですよ。1カ月に1回ずっと続けているんですって。
赤井 カイネレースって効きますか。
日原 私は保湿力が強いかなって。
岡田 私も好き。刺激がないから、ややいい感じ。
山家 でも、シミにはあまり効かないって言われていますよね。
高橋 トレチノインもハイドロキノンも何もかも使えないっていうようなすごい刺激を受けやすい人にも、あれは大丈夫。あれがだめという人は、誰もいない。朝晩二回であの上からお化粧したりしてもいいから、朝カイネレースを使ってもらって、夜はトレチノインを使ってもらうとか。普通の化粧品感覚で使えるからいいんですよね。で、うちの看護婦さんが私に黙ってバンバン使っていたらしくって、あまり過激に塗りたくると、トレチノインと同じように抜けてるっていうから、「あなた、よっぽどひどい使い方をしたのよね」って。やっぱり使いすぎるとだめですよ。どんなに大丈夫と言われるものでも、やっぱり一言注意した方いいかなって。それにしても、どんな使い方してたんだろう。
山家 化粧品と、美容皮膚科的な仕事が競合する部分が出てくるでしょう。化粧品も高機能のものが出てきますしね。
高橋 首のシワでもエスティローダーが最近開発した、何とかっていう化学物質が首のシワを伸ばす働きがあるって、FDA(米食品衛生局)で許可をもらうのにすごい時間がかかるから、待ってる間、薬品じゃなくて化粧品として発売しちゃう。それは米国でもうすぐ発売されるそうですよ。
福田 でも、それが出てくると、日本ではそれでかぶれる人がまた出て来たりして。
高橋 日本じゃ、多分売れないでしょうけどね。
日原 インターネットの世界が広がったので、化粧品の売上はすごいですよね。
山家 化粧品業界では、売上がもう頭打ちなんでしょ。飽和状態だから、違う方向性、エステ用の化粧品を作るとか、もっと高機能化のそれこそドクターズブランドをつくるとか。
福田 いろんなことが出てくるでしょうね。
山家 出て来ますよ。いろんな販売方式の、いろんなタイプの化粧品が。例えば、認可を持つある工場に依頼して、自分の好きな化粧品を作ってもらい、製造元はその会社で、販売元は先生の名前でっていうようなプライベートブランドの化粧品を作ることもできますよね。
日原 今もやってるし。
山家 それが増えてきますよね。
岡田 めちゃめちゃ増えてるよ、もう。
山家 そう言うのを仕事にするような会社が出てきますよね。ドクターの依頼を受けて、今は化粧品の製造も届出制になったから、「こういうのつくりますよ」という届出を出して、作って、依頼主の先生のところだけに卸す。また、同じ製品をそれぞれ別の名前で販売する先生たちのグループも増えるかもしれませんね。
福田 だからこれから何でもありになるわけでしょ。
山家 そうですね。化粧品と外用薬の区別がつかなくなってくるところがありますよね。
鈴木 化粧品メーカーの方が外用剤を作るのもじょうずなんですよね。薬屋さんが作ると使い心地がすごく悪い。でも、化粧品屋さんが作ると、その辺のノウハウをしっかり持っているから上手なんですよね。今まで外用剤だけ作っていたメーカーは、効けばそれでいいというか、その他はあんまり関係なしに作っていたんだけど、太刀打ちしていこうと思うと、機械の選定から使い心地、基剤の面とか、考えていかないといけなくなっていますよね。
山家 同じ成分でも基剤によって、伸びがいいとか悪いとか、全然違っていますよね。私たちも、これまで外用薬はただ効けばいいっていう感じでやっていたけれど、それではこれからは嫌われちゃうかもしれませんよね。
日原 外用剤メーカーが化粧品メーカーとタイアップして、その辺の解決に乗り出していますよね。
福田 化粧品と治療用の外用薬との境界は、近いうちになくなるでしょうね。
山家 そもそもどこで決めているんでしょうかね。
岡田 濃度とか。
山家 でも、一部ビタミンとかは、濃度制限も撤廃されるでしょう。
鈴木 「薬効成分」を入れると医薬品とか。
山家 例えばグリコール酸なんか、法的には何の規制もありませんよね。化粧品に使っちゃいけない成分というのは決められているけれど、それに入っていませんよね。
福田 昔エステと争った脱毛の話と同じことになるんですよ。最初の決めがない限り、そういうことになりますよね。
山家 ダメじゃないものは、良いのか、ばつがつかなきゃOKなのかっていうことなんですよね。グリコール酸だって、70%でも何の規制もないわけですから、いくらでも売れるわけでしょう。
福田 だから管轄の問題になるんですよ。厚生労働省(医薬品)と経済産業省(化粧品)で管轄が違うから、もう全然関係なくなっちゃう。
山家 経済産業省は産業が活性化した方がいいから、どんどんやってくださいってことなんですよね。
福田 厚生労働省の認可があると保険適用になるかならないかの違い、その一点だけなんですよね。
山家 厚生労働省と経済産業省の隙間に起こっちゃった部分は、グレイゾーンだからどうでもいいとされてしまう。その業界が大きくなってしまえばもう、潰せなくなっちゃうんですよね。
福田 規制を撤廃した瞬間に、競争は始まるのだから、その時点できちんとしておかなければ何ともしようがないわけですよ。だから、それで国民がかぶれて困ってもお役所は関係ないと。
山家 だったら、あまり恐ろしいものは、化粧品会社も一般の化粧品としては売らないでしょう。PL法が怖いから。そうすると、冒険がしたい場合にはドクターズブランドにしてください、医者が責任をとってくださいって。
日原 今までは目立たないようにやっていたのが、どっと表面化してくるでしょうね。先生たちもライン化してね。院内だけでなく、外でも売られるようになるんでしょうね。
山家 それは危険ですよね。トラブルが起きたらそこの先生の所でフォローアップするってことならいいけど、全国に流通しても関係する先生は東京にしかいなかったりすると、患者さんは、困っちゃうことになるかも知れませんよね。それと、個人輸入で問題が起きようがどうしようが、アメリカは経済優先の国ですから、どんどん買ってくださいですよね。自分たちの国が儲かればいいわけですからね。怖いですよね。
高橋 アメリカ製じゃなくて、偽物もいっぱい出てきますしね。
福田 だいたいこんなところでしょうか。

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